
診療・治療・症状

神経・筋疾患とは、体の機能が障害される病気です。
動物が正常に動くということは、脳で考えたことを脊髄という神経の束を介して、筋肉を動かす神経に命令を出して動きます。動いた結果を感覚神経から脊髄を介して脳へ伝え、正確に動いたかを判断しています。神経・筋疾患は、この経路のどこかが正常に機能しなくなった結果生じる病気です。
神経・筋疾患は症状が進行してしまうと完全に治癒することが不可能になってしまいかねません。当院は、初期診断に力を入れ、神経・筋の機能診断、脳脊髄の画像診断に特化した機器を備え、神経・筋の病気を専門的に診断・治療しています。
代表的な神経・筋肉の病気
てんかん
大脳の神経細胞から不適切な命令が出ることによって、身体の一部の動きが正常ではなくなる疾患です。意識を失い体が強直する全身性の症状や、意識はあるのに身体の一部が動かなくなる症状、意識を突然喪失する症状など、その症状は多岐にわたります。
診断には、正確な問診、血液検査、脳波検査、MRI検査が必要です。治療は原疾患の治療と発作のコントロールです。適切な抗てんかん薬を用いることが重要です。
椎間板ヘルニア
脊椎の間にある椎間板の一部が飛び出し、脊髄を圧迫することによって、痛みや麻痺を発症する病気です。症状は突然生じることも多く、迅速な外科的対応が求められる場合もあります。急性の完全麻痺を発症した患者の約8%には進行性脊髄軟化症という現在の獣医療では治療困難な病態も生じます。
診断には、正確な神経学的検査、電気生理学的検査、MRI検査が必要です。外科治療が適応になった場合、リハビリテーションを行いながら良好な結果を得られることが多いです。
変性性脊髄症
脊髄、末梢神経の機能が徐々に障害される病気です。人の筋萎縮性側索硬化症と似ている疾患と考えられています。比較的高齢で発症する遺伝子異常に原因を持つ疾患です。現在の医療、獣医療では治療法は見つかっていませんが、リハビリテーションにより機能の喪失を先送りにすることが期待されています。
一度失ってしまった機能を回復させることは難しいため、早期の診断・リハビリテーションの開始が求められます。
多発性筋炎
自己免疫疾患と考えられている筋の疾患であり、全身の様々な筋に炎症が起こり、疼痛や力が入りにくい、動きたくない、ぎこちない歩様などを示すことがあります。症状が多岐にわたるため、臨床症状からは診断がつきにくく、椎間板ヘルニアと誤診されることがよくあります。
成書には発症が稀とされていますが、これまでに見つけることができなかっただけであり、筋電図検査、筋生検を実施することで診断が可能です。早期診断・治療を実施することで良好な経緯をたどることが多い疾患です。

神経・筋疾患の診断に特化した検査機器を設備
正確な神経・筋・神経筋接合部の機能評価に必要な、脳波計、誘発電位筋電図検査装置を、画像診断機器としてはMRイメージング装置を設置しています。これらの機器により、進行性脊髄軟化症、変性性脊髄症、末梢神経疾患、多発性筋炎、脊髄腫瘍、悪性神経鞘腫など幅広い症状の診断が行えます。
当院では撮影したMRI画像は、原則として(株)ORMの読影医とディスカッションをを行い、正確な診断結果を導き出すよう努めています。

